奈具・奈具岡遺跡群
竹野川中流域に位置するこの地域には、奈具岡遺跡をはじめ、奈具岡北1号墳、奈具遺跡、奈具谷遺跡、奈具墳墓群、奈具谷4号墳・5号墳など多くの遺跡、墳墓、古墳が見つかっている。
奈具岡遺跡では、弥生時代中期にあたる約2000年前の玉作り工房跡が発見され、水晶の原石、玉製品の生産工程における各段階を示す未製品や、加工に使われた工具などが多数出土した。生産された水晶玉は、小玉・そろばん玉・なつめ玉・管玉で、ここでは原石から製品まで一貫した玉作りが行われており、国内でも有数の規模と年代を誇っている。
水晶玉とともに中国や朝鮮半島から入ってきたと考えられる鉄製工具類なども大量に見つかった。これは、九州北部よりも先に鉄加工の技術が伝来していた可能性を示すものとして注目されている。
これらの出土物は、奈具岡遺跡出土品として国指定重要文化財に指定されている。
また、奈具岡北一号墳は、奈具岡北古墳群七基のうちの唯一の前方後円墳であり、平成7年(1995)に発掘調査が実施された。
一号墳は全長約60メートル、前方部の幅約26メートル、高さ約3.6メートル、後円部に二基の主体部をもち、第一主体部は箱形木棺、第二主体部は舟形木棺が埋葬されていた。
鉄剣、鉄鉾(石突共)、鉄鏃、釦形銅器及び土器(陶質土器、土師器)が出土した。このうち、注目される遺物は陶質土器12点で、朝鮮半島南部の伽耶地区で焼成された陶質土器と日本列島内で焼成された初期須恵器とが混在する一群と思われる。
出土例が少ない陶質土器と国内において生産が開始された五世紀前半の須恵器とが一括して出土した稀有な事例であり、また出土品は武器類が主体で装身具をもたないという特異な副葬品構成をもち、半島の影響の色濃い遺物を含んでいて、被葬者の性格を知るうえで重要であり、奈具岡北一号墳出土品として府指定有形文化財に指定されている。