参考館
参考館(府指定 有形文化財)は、旧久美浜県の県庁舎の一部分が大正12年(1923)に移築されたもの。
旧久美浜県は、明治政府によって明治元年(1868)閏4月28日に設置され、明治4年(1871)年11月に旧豊岡県と旧生野県に編入されて廃止となった。
旧久美浜県の管轄地域は、当初は現在の京都府北部、兵庫県西部、富山県東北部にわたる広大なもので、旧久美浜県庁は、旧久美浜代官所跡地に置かれ、現在、その場所は、久美浜小学校になっている。
棟札銘文によれば、旧県庁舎が手狭かつ荒廃していたため、明治2年(1969)秋に新庁舎の造営工事を始め、明治3年(1870)5月に完成、大工棟梁は丹後国与佐郡大原村(現岩滝町)の高岡豊助義為との事である。
旧県庁舎の配置と間取りを描いた図面を見ると、敷地の三方を溝川が流れ、正面に「大門」が開き、後方は城山を崩した崖になっており、そこに「御役所」、「御玄関」、「御台所」の3棟の建物が渡り廊下で接続されて雄大な構えを見せていたことが窺われる。
その後、建物は、一旦移築されて後身の豊岡県庁として使用され(「大門」は現在も豊岡市に保存)、さらに大正12年(1923)に現在地に移建された。
参考館の屋根は、切妻造の一部入母屋造、桟瓦葺。参考館の平面を旧県庁舎の図面と比較すると、全体がそのまま一致する箇所はないが、参考館の玄関まわりと向かって左側の3室続きの部分は、旧県庁舎の「御玄関」棟の外周部を一部除去したものとおおむね合致する。しかし、内部の間仕切り位置は全面的に変更されていて、内部はほとんど原型を留めていないことが推測される。
参考館は、改造も少なくないが、外観は当時の面影をよく伝えており、久美浜の歴史を語るに欠かせない建物である。また、現在では数少なくなった明治初期における武家屋敷の流れをひく役所建築の遺構として、貴重なものといえる。