稲葉家は初代喜兵衛代から家業は糀屋で、6代目から藩の用達とともに沿岸交易により財をなした。
7代・8代から付近諸藩の金融を一手に引き受ける豪商となり、代々付近を買い取り現在の屋敷となったのは8代目市郎衛門代の寛政6年(1794)である。
平成15年(2003)に稲葉家住宅主屋、長屋門、南宝蔵、北宝蔵の4棟が国登録有形文化財となった。
主屋は明治18年(1885)の建物で、規模が大きく、部材も欅(けやき)の柱を多用し、松材の太い梁(はり)を井桁状(いげたじょう)に組み上げて豪壮な木組みを示すなど、上質かつ堅牢な構造形式となっている。長屋門は平入桟葺き切妻造りの2階建てで、桁行9.4メートル、梁行3.10メートル。屋根の両妻側に卯建(うだつ)を上げている。
歴史的建造物の保存修復を基本に、建物の一部を改修し「豪商稲葉本家」として開館し、活用をはかっている。